進化する中小企業を狙う悪質金融
システム金融にご注意!
サイト掲載: 2018年2月19日
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由利弁護士が、初めて、いわゆる中小企業者をターゲットにした悪質金融の相談を初めて受けたのは、平成7年ころだった。
そのころ、スポーツ新聞に大々的に広告を出して中小企業者に違法な金利で資金を貸していた。その内容について、由利弁護士は、平成10年に出版した「サラ金トラブル」の第6章に「システム金融の手口と対応」ということで紹介している。
それから数年は、月に1件以上位の割合でシステム金融の相談があった。
しかし、この数年は1年に1件か2件位だった。
ところが、平成30年に入り、2月中ころまでに2件のシステム金融の相談があった。
由利弁護士は、システム金融が異常な進化を遂げていることを知った。
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システム金融の巧妙なやり口
平成29年12月14日、小切手でお金を借りたが、小切手が落とせないという相談者(Aさん)がきた。
内容を聞くと、平成29年8月ころ、運転資金に困り、インターネットで「中小企業者の運転資金」というようなことで検索したところ、100万円借りて10日で3,000円という業者がいたことから、お金を借りたという。
100万円借りて10日で3,000円というのは、安いと思ったという。100万円で10日に3,000円というと月に9,000円だから、年10%位の金利であり、貸金業者としては通常の金利である。
ところが、数回借りては返したあと、もうお宅にはお金は貸せませんと言われたという。
そして、今度は、小切手で、お金を貸すというFAXが沢山きたという。
そのFAXには、次のように記載されている。
『事業・運転資金のお知らせ』
御多忙中恐縮ですが、資金をご希望でしたら弊社のプランでお勧めしたく、ご連絡させて頂きます。・限度額 10~300万円
・担 保 不要
・審 査 簡単迅速
受 付 用 紙
会社名: 年商:TEL: 社員数: 人
FAX: 希望金額: 万円
携帯: その他ご要望事項
業種:
上記に記載しFAXを頂ければ、貴社サイドに沿ったご提案を連絡し、ご納得して頂ければ即日対応可能です。
とんぼ商事
電話 03-6600-2800
FAX 03-6600-2800
担当: 桐谷
そして、見積書という次のような書類を送ってくる。
見 積 書
本日特別プラン
12月 1日 ¥260,000
12月 6日 ¥260,000
12月11日 ¥260,000
12月15日 ¥260,000
12月20日 ¥260,000
お気軽にお問合せください!
これ以外の手数料一切不要です。
100万円は11月21日に送ってきた。
100万円で1ヶ月で30万円の利息である。
異常な高利である。
お金を借りた日に、前記金額の小切手を業者に送る。
小切手を落とさないと不渡りとなり、事業の継続が困難になる。
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Aさんは、相談時に、
次のようなところからお金を借りていた。
業者名 借入額 返済額 借入期間
トンボ商事 60万円 75万円 26日間
トンボ商事 100万円 130万円 28日間
アイテム 100万円 130万円 27日間
アイテム 75万円 105万円 22日間
アイテム 50万円 80万円 20日間
アイテム 100万円 130万円 28日間
マックス 100万円 130万円 28日間
マックス 50万円 80万円 30日間
クラウン 50万円 70万円 21日間
YKプラン 40万円 65万円 15日間
ウイズユー 40万円 65万円 14日間
アライブ 132万円 207万円
ケーテック 147万円 210万円
イコール 69万円 103万円
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Aさんの相談時に、未決済になっていた小切手は、
次のようになっていた。
12月15日 330,000円
12月15日 260,000円
12月20日 260,000円
12月22日 330,000円
12月29日 320,000円
30年1月5日 320,000円
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Aさんに高利で金を貸している方法は、いわゆる従来のシステム金融という方法と、ファクタリングという名目の取引を仮装し、手数料という名目で高利を得ているという方法があるようだ。
Aさんは、直接交渉している人から言われたところに小切手郵送する。
その小切手は、アビオンという通信販売の会社に送付するようだ。
アビオンは、小切手を入手すると、すぐに別の会社に譲渡するという通知書を送ってくる。その通知書には「売掛債権」を譲渡するとなっている。
Aさんは、何も買ったことはないが、送られてくるFAXには「注文確認書」と書かれており、その中には「商品」として「ギフト券」などと書かれている。
ギフト券の数量は、1枚で単価は、130万円と書かれている。
しかし、Aさんはギフト券など買ったことはない。
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このような相談があった後、別の相談者は、次のようなFAXが送られてきたと言って、FAXを持参してくれた。
そのFAXには、次のように書かれている。
特定創始許可証明書中小企業支援強化資金
貸出許可番号N2018-許可〇〇〇〇〇-A〇〇〇〇〇
この度株式会社ナカニシは、創設20周年を迎えこれまでのご愛顧に感謝の気持ちを込めて、本日から中小企業支援強化資金(融資)を期間限定で実施する運びとなりました。また、弊社の審査基準を満たしている企業さまの中からさらに厳選し、200社の企業さまに本書(特定融資許可証明書)を発行させていただいております。
ご利用にあたり、下記の「中小企業支援強化資金のお申込み方法(申請方法)/お申込期限」をご確認の上、正式にお申込みください。
「貸付条件」は、次のようになっている。
利用可能額 上限20,000,000円
貸付金利 年率1.00%固定金利
返済可能期間 最長13年(156回)
返済金額 返済シミュレーションを参照
指定返済月 毎月末日(変更可能)
繰上返済/手数料 原則可能/不要
担保/保証料 不要/不要
連帯保証人 代表者(第三者不要)
契約方法 証書貸付(郵送契約)
貸付方法 銀行振込(電信送金)
ご融資までの期間 最短1営業日~2営業日
申込は、FAXで、24時間受け付けているという。
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このFAXを持参した相談者は、社員は1名程度の事業者である。
この会社の資金の名称は、あたかも、行政が行う中小企業支援策のように誤解するような名称となっている。
いわゆるメガバンクと言われる大金融機関でも、固定金利で年利1%というのはないと思う。
Aさんが巻き込まれたような業者でなければいいがと思う。