釧路市議会政務調査費訴訟判決
航空運賃は実費!
お旅行は、基本的に広範な裁量権を認める!
219万円を返還せよ!
サイト掲載: 2011年 3月 14日
平成18年度の政務調査費の返還訴訟提起
釧路市議会議員の政務調査費の使用に違法があるとして、平成20年1月と、5月に、二度に渡って、釧路市の住民が訴訟を提起した。 釧路市議会議員の政務調査費は、月額、議員一人当たり6万円であった。
1 訴訟で問題とされた争点
- 争点1 政務調査費の大半は、「お旅行」である。
- 釧路市議会議員の政務調査費の使用の驚くべき特徴の一つは、その大半が、「お旅行」に使われているということであった。
- 争点2 実費を上回る政務調査費の支出
- もう一つの特徴は、実費を上回る政務調査費の支出であった。即ち、現実にかかった航空運賃等を上回る費用が、出されていた。会派の言い分は、「釧路市の旅費規定」に基づいて請求をしたのだから適法であるということであった。即ち、実費とは関係なく、旅費規定に基づいて請求をしているのだというのである。
- 争点3 「その他経費」として携帯電話・ガソリン代補助費2万円の支出
- 釧路市議会議員は、年収で約800万円の報酬が出ていた(尚、合併前の町議会議員は、それを下回っている)議員としての活動に必要な携帯電話・ガソリン代は、報酬で賄われるべきであり、政務調査費を使用すべきではないと考えられた。
- 争点4 事務機器(パソコン等)の個人使用
- 議員個人に、パソコン等を所持させるために、政務調査費で購入していたことについて、議員個人が、自己の議員活動のために必要なのものであり、政務調査費で議員個々人に所持させるために、購入するべきではないと考えられた。
- 争点5 政党活動と見做されるべき会合等への参加費の問題
- 政党活動と見做されるべき会合等べき参加費は、政務調査費で支出される べきではないと考えられたことである。
- 争点6 地元での各種会合への参加費の問題
- 地元ないし周辺市町村で開催された会合等への参加費については、政務調査費が支出されるべきではないと考えられたことである。
- 争点7 事務所費問題
- 事務所の実態を備えていないので、事務所費を政務調査費で支出するべきではないと考えられたものである。
2 監査請求で返還を認めた内容
監査請求の段階で、返還するべきとされたものは、別表に記載している金額である。
- 第一次訴訟の自由新政クラブの返還額は、監査請求で認められた金額ではなく、自主的に返還した金額が殆どである。即ち、監査段階で、虚偽の金額を記載した「領収証」が存在していることが報道された。即ち、釧路市議会の会派であるにもかかわらず、釧路市の旅行会社ではなく、遠方のタクシー会社の領収証であったことから、その「明細」を弁護士法の照会で問い合わせたところ、会派の代表者に頼まれて、現実の金額とは違う金額を書いた領収証を作成したと認めた。そのため、会派が、全額を自主的に返還した。
- 監査請求では、事務機器について、政務調査費での支出を5割とし、5割の返還を勧告した。
- 政治活動のための会議への参加費を返還するよう勧告した。
- 地元での式典等の参加費について、一定金額ではなく、1キロメートル幾らという金額の支出に止め、それを越える金額の返還を勧告した。
- 豪華観光ホテルの宿泊費について、旅費規定の範囲を越える部分について返還を勧告した。
3 釧路地方裁判所が返還を認めた内容
- 実費との差額について、航空費については、実費としたが、その他の宿泊費等は、旅費規定による支出を認めた。
- 事務機器について、辞職数ケ月前に一人で2台のパソコン等を購入した議員が貸与を受けていたものについて、全額の返還を認めた。
4 釧路地方裁判所の判決の問題点
- 「お旅行」について、広範な裁量権を認めているが、明白に問題があると主張したことについて、納得の行く説明がない。特に、問題としたのは、同一会派が、同一年度に、全く、同じ自治体を視察先として視察に行っている。同じ自治体に行くのであれば、一度に行けばいいのではないかと思われる。
- 「箱もの」の失敗の事例として視察したとするような無責任な視察目的も、「市政に関連」があるとして、違法ではないとした。
- 事前に視察先と日時の打合せもしていないような視察についても、問題がないとした。
5 訴訟提起後の釧路市議会の改革
釧路市議会では、提訴後、政務調査費の支出についての指針を改定した。一つは、政務調査費の支給額が、月額6万円から4万円に減額された。「その他経費」として議員一人当たり2万円を限度として支出が可能であった指針について、認めないこととした。
6 地元紙の反応
地元紙は、「市議会と市民感覚」の「ズレ」浮き彫りと報じた。