年金が差し押さえられた!
自治体は年金を差押えてもいいのか?
サイト掲載: 2007年 12月 27日
A子さんは、夫の年金が入ったら、最後の住宅ローンが支払える。そうすれば、住宅ローンはすべて終わりになる!と思っていた。A子さんは、12月25日、「差押調書」という書類を受け取った。
それによると、A子さんの夫の預金が差し押さえられたということが書いてあった。
「差押金額 金112,300円」と書いてあった。
差し押さえられた預金は、年金だけを入れているものだった。
A子さんの夫の年金は、2ケ月で34,000円とちょっとだった。
A子さんは、地元の町会議員に相談をした。
町会議員は、驚いて私のところに電話をしてきた。
私は、翌日12時に相談にくるように指示した。
A子さんが持ってきた「差押え調書」には、滞納金額として、次ぎのように書いてあった。
納税通知書番号 | 年度 | 税額 | 延滞金額 | 納期限 |
釧路57て○○○○ | H6 | 0 | 22,400円 | H6.5.31 |
釧路57ね○○○○ | H11 | 0 | 15,600円 | H11.5.31 |
釧路57ね○○○○ | H12 | 0 | 13,100円 | H12.5.31 |
釧路57は ○○○ | H19 | 17,200円 | 1,700円 | H19.5.31 |
釧路500そ○○○○ | H19 | 39,500円 | 2,800円 | H19.5.31 |
合計 | 112,300円 |
その後、ローンが終わってから、廃車の手続に行ったが、「ナンバープレート」を持ってこなければ手続きはできないと言ったという。
廃車にしてしまってナンバープレートをもっていけなかったので、そのままになってしまっていたという。
まず、私は、陸運局に電話をして、この廃車になっている車がどうなっているか調べた。
H6年の自動車は、5年以上前に抹消となっているという。5年以上前に抹消となっている車は、「そのような自動車の登録があった、今は、廃車となっている」という証明書を出すこともできないという。
H11、H12年度の自動車は、3年前に職権で抹消になっているという。 抹消になっていることについての証明書をもらうためには、「自動車の登録番号と、車台番号」を記載して証明書の交付を請求しなければならないという。
登録番号は、差押調書の番号は書いてあるからわかるが、車台番号など、車検証でもなければ、記載のしようがない。
しかし、それでも、「車台番号」の記載をしなければ「登録が抹消となっている」という証明書は出せないという。
登録が抹消になっているという証明書をもらうために、なぜ、車台番号の記載が必要なのだろうか。
ただし、弁護士法の照会という手続きをとれば、登録番号だけで、「抹消の 書類」の交付を受けることができるという。
弁護士法の照会という手続きには、まず、弁護士に相談をしなければならないし、弁護士法の照会の手続きのために、各弁護士会が「照会手数料」というものをとる。一般的に言えば、弁護士の相談料が5,000円、「照会手数料」が、釧路弁護士会の場合は「4,000円」いることになる。
こんな面倒な手続きをとるだろうか。
A子さんは、「私がだらしないから。ちゃんとしなかったから」というが、なんと不親切な対応なのだろう。
それにしても、平成19年5月31日が納期限となっている自動車税の差押えを、半年たつかたたないかで、差押えをするというのはどういうことなのだろう?
しかも、半年たつかたたないで、延滞金が付いている。
税額 | 延滞金額 |
17,200円 | 1,700円 |
39,500円 | 2,800円 |
1,700円÷201日(6/1〜12/18)×365=3,087円
3,087÷17,200×100=17.9%
2,800円÷201日×365÷39,500円=12.87%
多重債務者が簡易裁判所で起こす特定調停においても、将来金利はなしということで、経済的建て直しに債権者は協力させらている。
税金が納められない住民から、このような延滞金をとるというのは、血も涙もないというほかない。
私は、行政庁の納税課の担当者と話をした。
私 「年金は、差押え禁止だということはわかっているの?」
担当者 「わかっています」
私 「じゃあ、どうして、年金しか入金になっていない預金の差押えをしたの?」
担当者 「こちらには、年金しか入っていないとかわからないんですよ」
私 「じゃあ、差押えをされたらそれでしょうがないというの?」
担当者 「年金しか入っていない預金が差押えされたというふうに言ってこられたら、対応します」
私 「対応しますって、どう対応するの?」
担当者 「預金に戻すとか………」
私 「もうずっと前に廃車になっている自動車の延滞税まで差押えをするというのはどういうことなの?」
担当者 「延滞税は法律で払ってもらうことになっていますから」
私 「払ってもらうことになっているって、もう何年も前に廃車になっていることはわかっているのでしょう。」
担当者 「それはわかっています」
私 「本税は払っているのだし、延滞税は免除できないの?」
担当者 「具体的な事情をお聞きして対処します」
A子さん夫婦は、その後担当者のところに行って事情を説明した。
A子さんは、平成19年5月31日納期限の自動車税の残りを、次ぎの車検までに支払うということで差押えはしないと言われたと言って、喜んで帰って行った。
感想
税金の滞納が多いということから、強制手段で税金を支払わせるということが行われている。税金を滞納することはよくないことであることは間違いがない。場合によっては、強制手段で税金を納めさせることも必要だろう。
しかし、年金しか入っていない預金を差押えするということは、許されないと思う。
特に、年金を銀行や郵便局に振り込むということは、国の施作として行われているのだ。年金は、老後の生活の支えとして、差押えが禁止されていることも広く知られている。
国は、安全確実に、年金受給者に、年金を届ける義務があるはずだ。
預金の差押えをするについて「金融機関に対して、入金になっているのが年金が大半であるような預金については、差押え手続はしないように」という申出を、金融機関にすれば、その金融機関は、入金の内容を調査し、年金の入金が大半の預金については差押え手続をしないということは十分できるはずではないか。
あるいは、金融庁が、年金しか入っていない、あるいは、入金の殆どが年金であるような預金については、たとえ、裁判所や行政庁から差押えの書類がきても、差押え手続をしないようにと指導すれば、年金しか入っていない、あるいは、入金の殆どが年金である預金が差押えされることはなくなる。
結局、年金しか入っていない、あるいは、入金の殆どが年金である預金が差押えされても、文句をいう人は少ないのだろう。
やり得なのではないだろうか。