2007年4月1日
資産管理の相談にあずかる社員に疑念が浮上しても、同様の業務を行わせていた理由は? 大和証券女性社員の顧客の預かり金の不正引出し

サイト掲載: 2007年 4月 2日

大和証券は、平成19年3月29日、「当社従業員による不正行為」についてと題する発表をした。
その内容は、次のようになっている。

 当社において、従業員の不正行為が判明いたしましたのでご報告申し上げます。
 当社の社内検査を契機として、本年2月に釧路支店の女性従業員(41歳)の不正行為が発見され、鋭意被害実態を把握すべく調査を進めてまいりました。
 同従業員が担当したお客様全員(612名)に対し確認作業を行っており、534名のお客様については問題がなかったことが確認できております。調査の結果、お預かり残高の不正引出しの事実が認められました18件(23名)のお客様に対しては、既に現状回復を実施,もしくは実施すべく作業を行っております。
 なお、不正行為の全容や行為に至った原因等については現在調査中ですが、今後当該従業員に対する告訴・告発を含めて対応を検討しておりまり、さらに関係当局と協働して調査を進めてまいります。
 お客様ならびに関係の皆様にご心配とご迷惑をおかけいたしましたことを深くお詫び申し上げます。
(以上)

これに関する新聞報道は次ぎのようになっている。

 昨年8月の社内検査で女性社員が扱った顧客の株売買額が経理上の記録と違う疑いが浮上。顧客からの聞き取り調査などを行い、今年2月、女性社員が不正に資金を引き出した事実を確認し事情を聴いていた。女性社員は「別の顧客に約束した利益の不足分補てんのために引き出した」などと話しているという。」(北海道新聞3月30日付け朝刊)

大和証券は、2月22日付けで、この女性社員が担当していた全顧客に次ぎのような書面を出している。

謹啓
 時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。また、平素は各別のご愛顧を賜り厚くお礼申し上げます。
 さて、お客様とのお取り引きを担当させていただいておりました弊社営業課○○○○は、この度、平成19年2月13日より営業職から事務職に変更となりました。永年のご厚情に深く感謝申し上げます。
 尚、後任につきましては追ってご連絡させて頂きたく存じますが、後任の決定までの質問やコンサルティング等につきましては営業課長、○○もしくはFA課長○○まで連絡を頂きますようよろしくお願い申し上げます。
 先ずは略儀ながら書面にてお礼方々ご挨拶申し上げます。
謹白
追伸
 「残高照合通知書」を同封いたしますので、ご確認の上裏面の「回答書」へご署名ご捺印の上、15日以内にご返送下さいます様お願い申し上げます。
(以上)

問題の女性社員は、「大和証券釧路支店 資産管理営業課 課長代理」なる名刺を持って業務を行っていた。
平成18年8月の社内検査が「疑念が浮上」した従業員に、そのまま、「資産管理」の業務に従事させていたことに、強い疑問をもった。
私が相談を受けた人の被害は、その殆どすべてが平成18年8月以降のものである。
しかも、この女性社員が、顧客の口座からの不正な引出しをしたのは、「一部の顧客に対し利益約束していたため、ほかの口座から預金を引き出して移し替えていた」(釧路新聞3月30日付け)だという。
証券不祥事が大きく報道されたことをきっかけに、損失補てんが問題となり、証券取り引きについての法的規制も格段に整備された。
この女性社員は、20年以上も大和証券に勤務していたという。営業の仕事を何年携わっていたかはわからないが、このような「利益補てん」を行っていたということには驚き以外の感想をもたない。

報道によると被害総額は「約6億円」だという(朝日新聞3月30日付け)。

顧客の資産管理の相談にあずかる社員に、業務上の疑念が浮上した場合に、どのような対応をするのか、もっと、わかりやすく説明するべきではなかろか。