簡裁の調停問題で、人権救済の申立?



 伊予三島簡裁裁判所の法律を無視した異常な調停について、国家賠償訴訟を提起していることは、すでにご報告している。

 通常、「違法だ」と指摘された場合には、それを「正す」のが、普通だと思う。

 ところが、伊予三島簡裁裁判所では、全く、違法と指摘されたことをほとんど反省することなく、調停も申立人やその家族に、法律を無視した不利益を課していることが判明し、そのことについて、愛媛県弁護士会に、「人権救済の申立て」がなされた。

 伊予三島簡易裁判所の責任は、勿論だが、愛媛県弁護士会は、この間、裁判所に対して、なんらの改善の要望もしていなかったのだろうか?


人権救済の申立てがされた調停の内容

 A男(25歳)とA子(23歳)は、多重債務のため、伊予三島簡易裁判所に 調停の申立てをした。A男とA子には2歳になる長男がいる。

 調停申立ては、平成15年3月3日である。

 A男とA子の債務総額は、395万円。A子は1件のみで、あとはA男の債務 だった。

 A子は仕事の関係で裁判所に出頭できなかったため、A男がA子の代理人と出頭した。

 伊予三島簡易裁判所の書記官は、「調停をスムースにすすめるため、A男の債務についてA子が保証人になることが必要」と言ったという。

その理由は、次のようなことだと言ったという。

  1. 相手方の業者は、6割方保証人を要求するので、調停をスムーズにまとめるためには、必要。

  2. 夫と妻は同一の制定であるので、連帯責任がある。

 そして、「妻が保証人になることに同意する同意書の書き方の類型を示して説明したという。

 A男は、家に帰り、A子に裁判所の書記官からいわれたことを話したが、A子は、不安に思って同意書を出さなかったという。

 利息制限法に基づくが元本充当計算についても、申立人が、一緒に行ってもらった市会議員の助言で過払いになるのではないかと話しても、聞く耳を持たない形で調停を成立させたという。

 また、A男の父親に対して、毎月一定額を債務の支払いのために援助する旨の確約書を提出するよう求めたため、A男の父親が、確約書を裁判所に提出したという。


問題点

 A男は、25歳である。

 A男の年収がいくらかわからないが、夫婦で総額390万円という巨額な債務を負担しているということは、それだけ過剰な融資がなされているということだ。

 A子の債務は、1社のみだという。

 A男の債務は、300万円を超える債務であり、完全に破綻状況にあることは明らかだ。

 このA男の債務を支払うために、妻を連帯保証人に入れるよう要求し、父親にも一定額を返済のために確約させるということは、無責任な過剰融資を繰り返している貸金業者の利益のみを擁護するものであるといえないだろうか。

 まして、利息制限法による元本充当計算すら、まともに行おうとしないということは、著しい職務怠慢である。

 私は、伊予三島簡易裁判所の数年間以上の調停について、全部見直しを行うべきだと思うが、いかがだろうか。

 日本国民の内、伊予三島簡易裁判所に調停を申立てた人は、他の簡易裁判所で調停を受けた人と比較して、著しい権利侵害を受けていると言えないだろうか。

この問題について、平成15年10月14日、愛媛県弁護士会に次のような人権救済の申立てをしたという。

  1. 裁判官に対し
    従前の特定調停のあり方について強く反省を求めるとともに、今後の特定調停の進め方において次のとおり改善を求める。
    1) 特定調停の相手方たるサラ金業者に、すべての取引経過の開示を求めること
    2) 上記取引につき利息制限法による引き直し計算をすること
    3) 調停の成立に際して本来保証人でない家族や第三者に対して裁判所から保証を求めることをやめること
    4) 援助者からの援助を求める取り扱いをやめること

  2. 松山地方裁判所長に対し
     松山地方裁判所館内の簡易裁判所における特定調停の運用の実情を調査の上、簡易裁判所の調停の現場において第一項で改めるべきと記載されたような利息制限法、特定調停法の趣旨に反する取り扱いがなされていないかを確認し、これに反する取り扱いに対しては指導を行うよう勧告もしくは要望を発することを求める。