最高裁に調停に関する要請書提出

 クレサラ・商工ローン調停対策会議は、2001年11月22日、最高裁判所に、「要請書」を提出した。

 要請の内容は、次のようになっている。

  1. 利息制限法を厳格に遵守して債権額を確定すること。
  2. 業者に対しては、全ての取引経過を開示させ、これを債務者にも資料として提供すること。
  3. 取引経過を開示しない業者には、調停委員会が文書提出命令を出すこと。
  4. 債務の支払については、経過利息・遅延損害金・将来利息を付さない扱いをし、多重債務者の生活を破綻させるような支払条項を成立させないこと。
  5. 調停成立のためという名目のもとに、本来債務者ではない配偶者や親子兄弟などの第三者を利害関係人として参加させ保証をさせたり、援助者の念書を提出させることを直ちに停止すること。
  6. 調停に不誠実な対応をする業者に対しては、前記1から5の趣旨に則った民事調停法第 17条に基づく決定を積極的に活用すること。
  7. 調停委員の選任方法について情報を公開するとともに、知識、経験等について多数な人材の確保のための方策を講じること。



要請の理由の要旨
簡易裁判所における債務弁済調停は、多重債務者の救済・生活再建に関し、最も簡便に利用できる制度として重要な役割を果たし、2000年2つき特定調停法が施行され、これまで以上に大きな役割を果たすことが期待される至った。

 ところで、調停手続は、民間人である調停委員の資質、能力、意識によって大きく左右されるものであるが、クレサラ問題についての正しい理解に欠ける委員も多く、債務者には冷たい言葉を投げかけたり顔見知りのクレサラ業者と親しく言葉をまじわすなど、公平公正さを疑わしめる言動が目立つこともあり問題が多い。

 多くの調停委員により誠実な調停が行われているが、以下のような一部の簡易裁判所における憂えるべき事実が報告された。

  1. 返済すべき債務額の確定においては、利息制限法に定める制限金利による元本充当計算を一切行わず、貸金業者の主張する約定金利を前提とする。
  2. 調停成立のため、債務者の親、子、兄弟、配偶者などの第三者を利害関係人として債務を保証させたり、援助者の念書を裁判所に提出させる。
  3. 債権者が強硬な立場をとる場合、調停成立の努力を放棄する。
    等々

 本来、債務弁済調停や特定調停は、経済的な危機に瀕した多重債務者が破産を避けつつ、債務を弁済しながら、生活再建を図ろうとするものである。そうであるなら、本来債務を負担していない親族等の第三者を利害関係人として参加させ、その債務を保証させることは新たな債務者を創出することになり、しかも、国家機関である裁判所が加担することになり、二重の意味で問題である。

 平成12年7月に日弁連消費者委員会が行った破産記録調査によれば、破産理由のうちの26・59%(重複回答で合計230・51%)が保証債務・第三者の債務の肩代わりであると報告されている。

 裁判所の調停の場において調停委員から保証人になるこを求められ、保証人にならなければ調停は成立しないとまで迫られるとこれを断ることは困難である。

 一旦調停が成立した場合には、債務名義となり強制執行されるばかりでなく、通常訴訟による判決とは異なり上訴して争うことが封ぜられており最終的な司法判断となるものである。

 そうであるならば、通常の訴訟の場合以上に裁判所の役割が重大にあるものと言わざるをえない。

 以上述べた理由を踏まえ、更に多重債務者の救済・生活再建の観点から、前記要請の趣旨のような調停が行われるべきことを訴えるものである。

 更に、我々は、最高裁判所に対し、簡易裁判所で行われている多重債務者にかかる調停の実態を早急に調査し、真に多重債務者の救済・生活再建に役立つ調停が行われるよう改善することを強く要望する。