全国クレサラ・商工ローン調停対策会議結成される!

 「全国クレサラ・商工ローン調停対策会議」が9月29日、高金利引き下げに反対する全国クレサラキャラバンにあわせて、名古屋市において、全国クレジット・サラ金問題対策協議会(以下クレサラ対協という)の弁護士、司法書士、被害者の会会員を中心に約50名により結成された。


一、対策会議の結成をするに至った経緯
 生活破綻の怖れのある個人、事業破綻のある事業主の経済的再生のため調停手続きが激増しており、2000年の全国の調停事件数はついに30万件を突破し、さらに特定調停法の施行により債務者救済のために裁判所、調停委員会の職権による権限が強化され、これまで以上に、より有利な解決方法を選択できるようになった。
 ところが、調停によって、なんの責任もないのに多重債務者の保証人にされたとか、調停によってなんの支払い義務もないのに支払い義務を課せられたなどとして、これまでに、全国に3件の国家賠償訴訟が提起されていることは、すでに、このホームページでも報告しています。
 全国クレジット・サラ金問題対策協議会では、これらの事態を重大に受け止め、今回の対策会議結成に至ったものです。


二、対策会議の目的・趣旨・今後の活動
 対策会議の目的は、「全国の簡易裁判所で行われているクレサラ・商工ローン調停が、消費者、中小零細企業の生活・事業の再建を実効あらしめるため、クレサラ・商工ローン調停の監視、対策に向けての活動を行う。」ことです。対策会議結成総会には、全国クレジット・サラ金問題対策協議会の弁護士、司法書士、被害者の会会員を中心に約50名が参加し、今後の具体的活動として次の活動を予定しています。

  1. 調停による再建活動の支援及び啓蒙活動
  2. クレサラ・商工ローン調停の問題事例・告訴・告発事例の収集
  3. 簡裁、最高裁に対する働きかけ
  4. マスコミ・市民に対する働きかけ
  5. 110番活動

 対策会議の役員には、代表幹事に甲斐道太郎大阪大学名誉教授、副代表幹事に伊澤正之弁護士(栃木県弁護士会)、常任幹事に全国各地から弁護士、司法書士、被害者の会関係者を選任しました。(事務局は、水谷司法書士事務所内052-916-5080 Fax052-911-3129にあります)

 結成総会で採択されたアピールは、次のような内容です。

「多重債務者救済にかかる民事調停制度の一層の改善を求めるアピール」

 簡易裁判所における債務弁済調停は、多重債務者の救済・生活再建、中小零細企業の再建に関し、もっとも簡便に利用できる制度として重要な役割を果たし、2000年2月に特定調停法が施行され、これまで以上に大きな役割を果たすことが期待されるに至った。

 ところで、調停手続は民間人である調停委員の資質、能力、意識によって大きく左右されるものであるが、クレサラ・商工ローン問題について正しい理解に欠ける委員も多く、債務者には冷たい言葉を投げかけたり顔見知りのクレサラ業者と親しく言葉を交じわすなど、公平公正さを疑わしめる言動が目立つこともあり問題が多い。

 多くの調停委員により誠実な調停が行われているが、以下のような一部の簡易裁判所における憂うべき事実が報告された。

  1. 返済すべき債務額の確定においては、利息制限法に定める制限金利による元本充当計算を一切行わず、貸金業者の主張する約定金利を前提とする。
  2. 調停成立のため、債務者の配偶者や兄弟などの第三者を利害関係人として債務を保証させたり、援助者の念書を裁判所に提出させる。
  3. 債務者が強硬な立場をとる場合、調停成立の努力を放棄する。

などである。

 本来、調停の趣旨は、多重債務者・中小零細業者が破産を避けつつ生活を再建していくためのものであり、新たな多重債務者が生み出されるべきものではない。したがって、我々は多重債務者の救済・生活再建の観点から、次のような調停が行われるべきことを訴える。

  1. 利息制限法を厳格に尊守して債権額を確定すること。
  2. 業者に全ての取引経過を開示させて、これを債務者にも資料として提供すること。
  3. 取引経過を開示しない業者には、調停委員が文書提出命令を出すこと。
  4. 債務の支払について、経過利息、遅延損害金、将来利息を付さず、多重債務者の生活を破綻させるような支払条項を成立させないこと。
  5. 多重債務者にかかる調停において、新たに利害関係人を入れるなどして、新たな司法被害者を作り出すような調停条項を成立させないこと。
  6. 調停に不誠実な対応をする業者に対しては、前記1から5の趣旨にのっとった、民事調停法第17条に基づく決定を積極的に活用すること。

 我々は、最高裁判所に対し、簡易裁判所で行われている多重債務者にかかる調停の実態を早急に調査し、真に多重債務者の救済・生活再建に役立つ調停が行われるよう改善を強く要望する。さらに我々は、調停に関わる裁判官、調停委員に対し、現在のクレサラ・商工ローン問題について正しい理解を得るとともに、多重債務者が自信をもって調停に臨むべく、生活改善運動の一層の充実を目指すために全力をあげて支援することを、ここに決議する。

2001年9月29日
全国クレサラ・商工ローン調停対策会議結成総会