「業者をもうけさせていない」調停はできない?

 8月29日、「四国クレジット・サラ金問題関係者連絡会」の集会が行われた。四国各県の多重債務者の救済活動をしている被害者団体の意見交換会である。

徳島からの報告
 徳島では、特定調停を機に、調停の運営が変った。現在は、利息制限法による元本充当計算を行っている。将来利息もつけない取り扱いとなっている。

高知からの報告
 高知も、やはり、特定調停を境にして、調停の運営が、原則、利息制限法による元本充当計算を行うように変った。中には強引な業者もおり、困難な事例もあるが、そのような場合に、調停を不調にするかどうか悩んでいる。

松山からの報告
 松山簡易裁判所では、利息制限法による調停が行われていると思うが、現在は、あまり調停を利用していないのでわからない。伊予三島のような酷いことがあるとは知らなかった。

高松からの報告
 高松では、利息制限法による計算ではなく、業者のいいなりが多い。
 丸亀の裁判所では、調停委員が、申立人に対して、「あなたは、業者を儲けさせていない。業者は調停に応じないだろう。調停は無理だ」ということを調停の席で言われた。これは、最後に借りて、一度も支払いをしていないというケースである。
 又、アイフルを相手方とする調停では、次回にもう一度調停をするということになったのに、裁判所が、アイフルと電話で話をして、利息制限法ではなく、みなし弁済ということで、アイフルの主張する金額全額に将来利息をつけて支払えという17条決定がされ、裁判所から送られてきた。



 平成十一年度各高等裁判所管内調停運営協議会における協議結果のうち、「大阪高等裁判所管内調停運営協議会」には、次のような記載がある。

  1. 多重債務者は、その資力に比べて一般に多大な債務を負担しており、支払いに困って調停を申し立てたものであるから、その債権の社会的、経済的な価値は少ないこと。

  2. 債務者は、債権内容を実現するために訴訟手続を取らざるを得ず、業者が多数の事件について訴訟行為をなすには、時間と費用と労力を要するところ、多重債務者事件の調停事件においては、債務者から調停の申立てをするという債務者の積極的な行為により、調停が成立すれば、比較的容易に債務名義を取得できること、特に出頭しない債権者は、時間や労力をついやさずにいながらにして17条決定による債務名義を取得することができること。

  3. 調停は、条理にかない実情に即した解決を図ることを目的としているが、現在の日本の経済状態は未曾有の困難期にあり、日銀の金利は著しく低率に抑えられ、その他の市中銀行においても、金利が非常に低い状態にあるという社会情勢にかんがみると、裁判所が実勢利率を著しく超える高利率を容認することはできないこと。

  4. 訴訟上の和解においては、将来利息はカットする取扱いが多いと思われるところ、調停事件においてもこれと整合させる必要があること。

  5. 従前から将来利息をカットする調停事件処理をしている裁判所があり、そのような取扱いをしていく裁判所の足を引っ張るようなことは相当ではないこと。


さらに、将来利息をカットするとしても、借入れをして一度も返済していまま調停を申し立てた場合にも、将来利息をカットすることが相当がどうかという議論があるとして、次のような記載がある。

  1. 債務者の支払能力にかんがみ、当該債権自体が額面どおりの経済価値を有しているかは甚だ疑問であること。

  2. 一般に業者は貸付けに当たり、借入れ申込者が多重債務者であるかどうかを容易に調査し得ると考えられるが、安易に貸付けをしたり、あるいは、借入れ申込者が支払い困難な状況にあることを知りながら危険な利益を得るため貸付けを行っているような疑いもあり、少なくとも、当該貸付けについて業者側に過失を考える余地があることも考慮できるのではないかと思われること。

  3. 実質的な経済価値の少ない債権であることから、元本自体や遅延損害金をカットする調停も可能であると思われる所、現在のところ、そこまで踏み込んだ取扱いはなされていないこと。

  4. 将来利息を認める場合、その線引きが難しくなることなとを考え合わせ、大阪では、例外なく、将来利息をカットするという方針で対応しています。


 日本国民は、どこに住んでいるかによって、このように大きな取扱の不平等があるということである。国民は、国家から、平等に取り扱われる権利を有しているはずである。同じ法律の適用を受けている。

 法の下の平等が、司法の場で、保障されていないことに、最高裁判所は、どのように答えるのだろうか。