調停では、法のみが適用とされるものではない!

不良債権が一転優良債権となる手品!
債権者は、すべからく、多重債務者に調停を申し立てるよう勧めるべし!

 調停によって支払義務のない債務を負担させられ、多重債務者にされたことを理由として、国家賠償訴訟を提起したことは、このホームページでも報告した。

 国は、その訴訟で、次のように主張している。

、調停手続においては、民事に関する紛争につき、当事者の互譲により、条理にかない、実情に即した解決を図ることを目的とするものであって、解決規準として法のみを適用することは要求されていない。
 したがって、調停案においても、法及びその趣旨を尊重するのはもちろんのことではあるが、厳格に法のみに拘束されるといったものではない。

、また、事実に関しても、民事訴訟の場合には、適用の前提となる事実、即ち、要件事実についてその存否を確認しなければならないのに対して、調停においては、条理の適用を前提として、事件の全体像を把握し、両当事者の実質的衡平を実現するために必要な事実関係を捉えることを目的としている。

、貸金業規制法の貸金業者に対する規制の在り方が、原告らの主張のとおりであるとの前提に立つとしても、それは、貸金業者の調停外の場面での行動に関して規制したものであることは明らかである。調停委員会が調停に現れた一切の事情を総合考慮して、債権者以外の利害関係人の参加を認めて、その者との関係も含めた調停案を成立させることは、貸金業規制法によって禁じられているものでもないし、また、その法の趣旨に反するものでもない。

 貸金業者の多くは、家族に『内緒』で金員を融資する。借入れ申込の際に資金需要者から聴取する内容には、次のような項目がある。

  • 今回のお申し込みを、ご主人・奥様・ご両親はご存じでしょうか?
      □内緒  □承知

     クレジット会社は、契約書に、「DN」と大きな文字で記載していることがある。
    「DN」って、どういうことかわかりますか?

    「主婦」が宝石を幾つも買わされたという訴訟の契約書に大きく、「DN」と書かれていた。裁判官が、クレジット会社の代理人に、「DNというのは、どういう意味ですか?」と聞いた。クレジット会社の代理人には、わからなかった。しかし、私が代って、答えた。「それは、ダンナに『内緒』ということです。」そして、傍聴席にいたクレジット会社の担当者に、そのことを確認したところ、クレジット会社の担当者は、「そうだ」と認めた。

    「本来、収入のない者には、金を貸してはいけない」というのが、金を貸す人の条理であるはずであるが、日本の貸金業者の多くは、全く資力がないと思われる「主婦」や、学生にも、考えられないような多額のお金を貸す。

     全く資力がない「主婦」や学生にお金を貸すときには、必ず、配偶者である夫や、両親の職業・収入等を聞き出す。これは、「誰にも知られず簡単に」をキャッチフレーズにしてお金を貸している貸金業者が、公然と行っている「個人情報の不正入手」である。少なくとも、夫は自分では、全く知らない間に、自分の個人情報を貸金業者に入手されているのだから。
    『内緒』でお金を借りる人程、多くのお金を貸す。

    なぜか?

    『内緒』でお金を借りた人は、「一生懸命返す」からだ。

    なぜか?

    ばれたら、困る一心で、次から次へと借りては、返し、返しては、借りるという繰り返しを行う。

    いずれは、行き詰まる。

  • ある多重債務者の家族は、親族で集まって返済資金を作って返す。
  • ある多重債務者は、どうしても、家族に打ち明けられなくて、家出する。
  • ある多重債務者は、どうしても、夫に言えなくて、泥棒をして返済資金を作り、警察に逮捕され、新聞等で大きく報道される。
  • ある多重債務者は、鬱病になり、病院通いをする。
  • ある多重債務者は、自殺する。
  • ある多重債務者は、裁判所に調停の申し立てをする。

     日本の既婚男性の多くは、妻を絶対的に信頼し、すべての家計管理を任せていることが多い。妻から、小遣いをもらって、小遣いの範囲内でつましく自分の趣味や交際をする。その妻が、夫に『内緒』で、高利の金を借り、夫の収入から「せっせ」と金を返している。妻から多額の借金があると聞かされ、驚いて裁判所に調停の申し立てをしたところ、裁判所では、夫が援助者として、利害関係人に入り、支払わねばならないという調停調書を作られる。

     このような不条理が許されていいのだろうか。

     夫婦は、離婚すれば、赤の他人。経済的理由で離婚する人が多いことは、広く知られた事実である。経済的理由で自殺する人は、1万6000人とも言われているという。
     本来全く支払義務がない人を、多重債務者が長期にわたって支払うという債務の連帯保証人にさせることについて、最高裁判所が「正当」だとお墨付きを与えるに等しい、国の答弁書には、驚くほかない。

     このホームページを見た債権者は、「不良債権を一転優良債権にしてくれる」裁判所の調停をどんどん利用するように、多重債務者に勧めるだろう。

     私が、国の答弁書の内容を、ある大手の中小企業金融専門ノンバンクの担当者に話したところ、次のような感想を聞かせてくれた。

    「特定調停というのは、債権者に厳しい法律だと聞いていたのですが、そういう援助者を入れてくれるということなら、債権者のための法律ということなのですね」