要介護認定二次判定変更事例集(抜粋)

二次判定変更事例集の抜粋がワムネットにアップされました。全体では40例、うち上昇変更が33例、下降変更が7例です。変更理由としてはわれわれの審査会もそうですが、総合的に勘案して・・・といった表現になっています。はたしてどれだけ参考になるか・・・

本事例集は、全国の都道府県の協力を得て、要介護認定又は要支援認定について、コンピュータによる一次判定の結果を、介護認定審査会における二次判定により変更した事例を取りまとめたものである。
これは、各要介護度についての新たな「状態像の例」を提供するものではなく、個々の事例について二次判定において要介護度を変更するに至るまでの検討の過程を含めて要約整理し、今後の審査及び判定のための参考資料として提供するものである。
従って、
実際の審査及び判定に当たり、本事例集の変更事例の結果を形式的に当てはめることを求めるものではない。審査会における検討や、審査会委員の研修等に際し、本事例集を十分に活用していただきたい。

事例 年齢 介護環境 最も類似する状態像の例 要介護度変更

審査及び判定の概要
88歳 居宅 支一4 非該当→要支援  平成11年より物忘れや被害的になることがあり、近隣とのトラブルを起こすこともある事例。介護認定審査会では、「特記事項及び主治医意見書から、日常生活はほぼ自立しているものの、近所とのトラブルや服薬管理等のために定期的な訪問が必要なのではないか」との意見が出された。状態像の例との比較と併せ、日常生活自立度の組み合わせによる要介護度分布も総合的に勘案して、要支援に変更した。
75歳 居宅 1−3 要支援→要介護1  聴覚障害があるため他者との意思疎通が比較的困難な事例。介護認定審査会では、身の回り、意思疎通、問題行動に関する特記事項の内容について検討が行われた。「意思疎通に相当な時間を要し、暴言暴行や性的迷惑行動などの問題行動が周囲に与える影響が大きいのではないか」との意見が出され、総合的に勘案した結果、要介護1に変更した。
17 90歳 介護老人保健施設 2−5 要介護1→要介護2  平成5年頃より問題行動が出現し、聴覚障害もあるため介護者との意思疎通が困難である事例。介護認定審査会では、「特記事項及び主治医意見書において、コミュニケーションの困難さ、尿失禁、トイレ誘導に抵抗がある、汚れた衣類をタンスにしまい込むなどの問題行動が記載されており、それらに関して介護の必要性が一次判定結果より増加しているのではないか」との意見が出された。さらに状態像の例との比較を基に総合的に勘案し、要介護2に変更した。
19 75歳 居宅 3−6 要介護2→要介護3  平成9年頃に慢性関節リウマチを発症し、徐々に増悪して現在は歩行不能でベッドから殆ど離れることがなく座っている状態にある事例。介護認定審査会では、特記事項及び主治医意見書における手指の拘縮、起き上がりの問題等に関する記載を基に介護の必要性について検討が行われた。さらに、状態像の例との比較に基づき、要介護3に変更した。
24 88歳 介護老人福祉施設 3−1 要介護4→要介護3  廃用性の筋力低下や聴力障書の見られる事例。介護認定審査会では、複雑動作、特別介護への介護の必要性について検討が行われた。「特記事項の記載から、意欲がないだけで実際には可能な項目があると判断できるのではないか」との意見が出された。状態像の例との比較に基づき、要介護3に変更した。
33 89歳 介護老人福祉施設 4−1 要介護3→要介護4  平成7年頃より記銘力低下・見当識障害が出現して専門病院を受診し、アルツハイマー病と診断され、専門病院、老人保健施設を経て、平成10年より現在の施設に入所している事例。介護認定審査会では、特記事項における転倒の危険性、徘徊のための常時の見守り、放尿するため1時間毎の声かけ誘導等の記載及び主治医意見書における不安・焦燥感から誰かそばにいないと悪化するなどの記載から、介護の必要性について検討され、要介護4に変更した。

要介護認定における留意点について


今般、提供いただいた事例の取りまとめに際し、既に「要介護認定等の実施について」(平成11年7月26日厚生省老人保健福祉局長通知 老発499号)、全国高齢者保健福祉関係主管課長会議資料等においてお示ししている留意事項を以下の通り。まとめた。
今後、介護認定審査会における審査及び判定のみならず、要介護認定に携わる総ての者が、これらの点について留意し、より充実した要介護認定業務を推進していただきたい。

1基本調査について

○基本調査の実施に当たっては、「認定調査票記入の手引き」について十分に確認の上、調査を実施されたい。
○また、痴呆性高齢者については、痴呆症状にとらわれるあまり、随伴する身体の状況等に関して、いわゆる「チェック漏れ」がないように、注意を払う必要がある。


2特記事項および主治医意見書について


○特記事項については、各項目に関する頻度等について具体的な記載が必要となる場合の他、自己の判断に十分自信がもてないときや、能力を勘案したとき等の際に、簡潔かつ明確に記述されたい。なお、「認定調査票記入の手引き」で想定されている範囲内で、明確な根拠に基づいて判断を行った場合については、特段の記載を要しない。
○また、状態像の変動が大きい事例においては、基本的には調査対象者、家族等の介護者への聞き取り、調査時の状況を総合的に判断を行うこととされており、加えて、変動の頻度や程度及び調査項目の判断を下した根拠やその場合の状態についても記述して差し支えない。


3一次判定の確定について


○基本調査の調査項目のチェック内容と、特記事項又は主治医意見書の内容とが一致しない場合については、調査員又は主治医からの聞き取りを行うなど、基本調査の調査項目等について十分に確認する必要がある。


4二次判定について


○特記事項又は主治医意見書の内容が、基本調査の調査結果と一致する場合は、一次判定の変更を行うことはできない。しかし、特記事項等で、頻度や程度に関して新たに明らかになった情報があった場合については、変更を行うことが可能である。
○よって、チェック項目数の多寡等の理由による一次判定の変更を行うことはできない。
○同様に、本人の意欲の有無を根拠に一次判定を変更することはできない。ただし、特記事項等によって介護に要する時間が延長又は短縮している具体的な状況が生じていると判断される場合は可能である。
○また、要介護認定は、介護の必要度を判断するものであり、医療的な重症度や障害の程度と必ずしも一致するわけではないことに十分にご留意いただきたい。


5認定審査会が付する意見について


○認定審査会においては、必要に応じて認定の有効期間の延長又は短縮及びサービス種類の指定について意見を付することができる。
○有効期間の延長又は短縮については、申請者の状態が安定して継続すると判断できる場合には、有効期間の是非について検討されたい。なお、その後に何らかの事由により状態が変化しても、要介護状態区分の変更・取消(介護保険法第29〜31条)により対応できる。
○また、サービス種類の指定を行う場合は、指定されたサービス以外のサービスは利用できないことから、対象者の状況を具体的に検討の上、種類を指定する必要があるが、要介護状態の軽減又は悪化を防止するため、特に療養上必要がある場合は、複数のサービスの組み合わせが可能であることも踏まえての検討が求められる。


6状態像の例について


○本事例集は、新たに状態像の例を追加する趣旨のものではない。
○状態像の例との比較検討の際には、単に中間評価項目毎の得点やそれらを表示したレーダーチャートの形状のみではなく、特記事項や主治医意見書などにより総合的に判断するものであることに留意されたい。

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