13.すもも (H13.6.3)
「ねぇ、あの木なに?」
牧草地の中にぽつんと白い花を咲かせた木を見つけてボクは
助手席の妻に聞いた。
「すももじゃないの?」
「へー、すももか。で、なんであんな所にあるの?」
「たぶん、昔そこに農家の家があったんだよ。」
「なんでわかるの?」
「すももって家の周りとかによく植えたりするもん。」
「はー、なるほどねぇ・・。」
つまり、あのすももはそこに入植者が居たという唯一の痕
跡なのだった。希望に胸を膨らませてこの地に入植し、でも
結局は夢やぶれて去っていった見知らぬその一家のことを思
った。
牧草地にぽつんと咲くすももの白い花がどこか悲しく見え
た。
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