彼と目があった・・。その目は切れ長につり上がっている。
マンガなどでよく描かれるキツネのあの目と同じだ。
実際のキツネにそのキツネ目を見たのは初めてかもしれない。
無心に口を動かしている彼の薄汚れた顔は、なんだか下卑て見える。
でも、そのキツネ目はどこか愛らしい・・。
そして、そのキツネ目の奥の方に、たくましさのようなものを感じた。
彼は生き抜いている・・・。
街の中で野良犬のような生活をしている彼もまた、
たぶん必死に生き抜いているのだ。
カラスは、そのオーラに気おされて、攻撃出来ないでいるのかもしれない。
やがてこっちに尻を向け、所々毛の抜けたしっぽを水平にぴんと張って
ふんっ!ふんっ!と歩き去る彼を見ながら、
「そういうもんだなぁ・・」と感心している自分に気づいた。