自分はちょっとビックリした。まさか近づいてくるとは思ってもいなかったからだ。
鹿たちは「なにかようなの?」というような表情をしている。
あいかわらず、すらりとした首につぶらな瞳。とてもかわいい・・・・。
でも、その身体は、もうすっかりと地味な冬毛になっている・・。
彼女たち、いったいどこまで近づくつもりなのか、そんなことを思ったとき、
対向からスピードを出した車がやってきて、ものすごい音とともに走り去った。
彼女たちはそれに驚いて、その場から飛び退いて、そして後ろを向いて、
ぴょんぴょんと跳ねながら藪の中に消えていった・・。
そんな彼女たちを見ながら、冬毛になった鹿のお尻が夏毛と同じく
見事に白く、そしてなんだかとてもかわいいのに気づいた。
おりしも今は、鹿たちの恋の季節・・。
それにしても、あの車が来なかったら、いったい彼女たちは、
どこまで近づいてきたのだろうか・・・。
すぐそばまで来てくれたら、ほっぺにキスぐらいはしてあげたのに・・・。