シーンと静まり返った街の中にしみこむように
ヤツ・・・、エゾセンニュウの鳴き声が聞こえてきた。
「トッピンカケタカ」
そう鳴くと本には書いてある・・・。
エゾセンニュウは、その鳴き声から「エゾホトトギス」と呼ばれたりもするらしい。
でもなぜだろう・・・、鳴き声を文字にしてしまうと
なんだかすっかり味気ないものになってしまう・・・。
鳥の鳴き声は(動物も)所詮、文字ではうまく表現できないものなのだろう。
エゾセンニュウは夜に鳴く鳥・・。
そして、なかなかその姿を見せない・・。
闇の中、人目を避けてヤツは、いったい何を思い 鳴いているのか・・・。
なにか、悲しいことでもあるのだろうか・・・。
いや・・、ちがう・・。
自分にはヤツの鳴き声が、けして悲しくは聞こえない。
その鳴き声は、どこかネアカで前向きに聞こえるのだ。
ヤツはネアカで前向きな鳥ではないだろうか・・・。
それにしても・・・・・・・、
今聞こえている ヤツの鳴き声がたどたどしい・・。
まだ、ちゃんと鳴けない若い鳥なんだろうか・・・。
「ったくぅ、へたくそめぇ! 君はもっと修行したまえ!!」
そう言いながら窓を閉めて布団に潜り込んだら、そのまま寝てしまった・・・・。
なんだか元気をなくした夜には、
エゾセンニュウの鳴き声を聞いてみるのも良いかもしれない。