開陽台に着いてみると、朝方まで降った雨のためか、空気が澄んでいて
せっかくなので開陽台周辺を走ってみる。
人からおすすめの場所を聞かれることがあるけど、
そんなとき自分は考え込んでしまう。
そしてなによりも、前からも後ろからも車の来ない、
それにしても寒い・・。
平成10年11月8日。この日がどうやら今年のラストランと言うことになりそうだ。
単車に乗ったのは1ヶ月以上ぶりだった。
さて、どこへ行こうか・・・。
もう、知床横断道は閉鎖されているはずだ。何よりも羅臼岳の頂の見事な白が
それを物語っている。
寒いので、あまり長距離を走る気にもなれない。
とりあえず開陽台に行こうと思った。安易だが無難な選択だった。
遠くの景色もすっきりと見える。いや、単に秋のせいか?
頻繁に行く開陽台なのに展望塔に登ることの少ない自分なのだが、
さすがにちょっと登ってみたくなった。
展望塔から見える武佐岳がまるですぐそこにあるように見える。
雪を被った斜里岳が妖気を漂わせながら顔をのぞかせている。
澄んだ空気と、高度の低い太陽の光が牧草の一本一本をくっきりと映し出す。
開陽台のそんな光景は夏のそれとはまるで違っていた。
開陽台は晩秋がいいと思った。
展望塔脇のキャンプ場にはテントが3張りあった。
居るのだね、そんな人たちが・・・。
ただ走っているだけで満足感が満ちあふれてくる。
それはなぜだろう。
どうと言うことのない、この見慣れた風景の中を
自分は飽きもせず、走り続けている。
それはなぜか・・・。
それは、四季折々で表情を変える風景や、ちょっとした光の加減で
何でもない木々が突然自己主張しだす、その瞬間に立ち会うことが出来るから・・。
そう言うことなのかもしれない。
それはそうだ。自分は、ここのありふれた風景の中をそんな思いで走るのが好きなわけで、
それが自分のツーリングの仕方だからだ。
自分は景勝地に行くこと自体を目的にしていないのだ。
では、開陽台へはなぜ行くのか、
開陽台は自分にとって、休憩ポイントと言ったところだろうか・・。
まるでプライベートロードとでも言えるこの道を走ることが
何よりも好きなのだ。
寒い・・、寒い寒い寒い寒い寒い・・・。
いつの間にか思考が停止して、頭の中は「寒い」一色になって、
おそらくそうなるであろう今年のラストランは終わった。