その日も、知らない道にフラリと入り込んで走っていた時だった。
「あの親子は、街から離れたこんなところで何をしているのか?」
そのコーナーを抜けた後、後ろを振り返ってあの親子を見た。
少し時間が出来たときなどに、自分は開陽台周辺の牧草地帯をウロウロすることにしている。
いつも通る道と違う道にフラフラと入り込んだりするのが好きで、
自分はそうやってあのあたりの道を探索している。
きつめの左コーナーを曲がると短い坂があって、その先が右コーナーであることを
標識が示している。
でも、そのコーナーの入り口は坂の途中からは見えない。
その坂を上りきったときに見えてきたコーナーの入り口は、すぐ目の前だった。
しかも、少々きつめだ。
「いやなカーブだな、ここ、あぶねーよなー。」
そう思いながらコーナーをまわり始めたときだ。
コーナーの外側に幼児が3人いるのが見えて、ドキッとする。
でもすぐに、その子たちはガードレールを挟んだ向こう側の歩道部分にいるのがわかった。
そして、その子供達に囲まれるように母親と思われる女性が
しゃがみ込んでいるのが見えた。
顔を上げた彼女と、そして3人の子供達の目が自分と合った。
母親はどこか気の抜けた、そして寂しげな目をしている。
周りの子供達は、ただぼんやりとした、そんな目だった。
そんな疑問が浮かんだその時、母親の足下にガードレールに立てかけた
花束があるのを見つけた。
その親子の前を通り過ぎながら、自分はすべてを悟った。
おそらく、あの子供達の父親はあそこで死んだのだと・・・。
それは、たぶん交通事故だったのではないか。
このコーナーなら事故があっても不思議ではない。
そして、ガードレールにも路面にも事故の跡が残ってなかったので、
その父親が亡くなったのは最近ではないのだろう。
おそらくこの日が彼の命日なのではないか。
なにをするでもなく、ただ花束の前にしゃがみ込む母親と
その周りでぼんやりと立っている子供達が、自分にはとても悲しく見えた。
自分はあの親子の姿に
交通事故の悲しい現実ってやつを かいま見たような気がしていた・・・。