その日も、小雨の降る寒い日だった。
その微笑みを見たとき、ハッとした。
なぜだろう・・・。
それは、
それにしても、彼女は今も微笑み続けているのだろうか・・・。
彼女が旅した道東で、ほんの一瞬すれ違っただけの男が、そんなことを
8月は寒い月となり、連日続く雨のなか、
合羽を着込み、足早に走り去るライダーや、伏し目がちに黙々と走るチャリダー達が、
なにやら気の毒になってしまう。
普通チャリダーは、なぜか車道を走るのだが、
一人歩道を走っている女の子チャリダーを見つけた。
周りの景色から浮き上がるような黄色の合羽を着て、
アップダウンの多い道のため、ギアを落とした彼女の自転車は、
一生懸命こいでいるわりにはのろのろとしか進まない・・。
無造作に自転車用のヘルメットを被った彼女は、
前を見つめて胸を張り、そしてなぜか幸せそうに微笑んでいる。
小雨の降る寒い日に、なぜ彼女は幸せそうに微笑んでいるのか・・・。
それを見て自分は、なぜハッとしたのか・・・・・。
遠い昔に、自分がどこかに置き忘れてしまった「何か」を、
微笑む彼女の姿に見つけたからかもしれない・・・。
ただ、その「何か」が何であるのか未だにわからないのだが・・・。
自分はなぜか、あの微笑む彼女がその微笑みのように、
幸せな人生を歩んでくれることを願わずにはいられない。
願っているとは、彼女には知る由もないのだが・・・。