ここには、主にライダーやチャリダーたちが泊まる。
この鮭の宿、いろいろな事情で今年は休止する事になった。
鮭の宿を利用した人たちのなかには、ちょっと変わった人なんかも居て、
もう数年前になるが、夏のある日、某水産会社さんに救急車が呼ばれた。
「そういえば、あそこの水産会社さんに救急車呼ばれたのってなんだったの?」
その後、彼を見かけることはなかった。
彼は今も、どこかで修行をしているのだろうか。
実は、ある川で空手着を着た白骨死体が見つかったなどという噂まである・・・。
標津には、毎年6月から9月いっぱいまで、
商工会前の駐車場の片隅に、ふた張りのテントが設置される。
テントの中には畳が敷かれていて、広さは8畳ぐらいだっただろうか。
貧乏な旅人のための簡易宿泊所だ。名前は「鮭の宿」と言う。
利用者数は延べ数百人と言ったところだろうか。
秋鮭の時期が近ずくと、「サケバイ募集」のチラシが
テントの中に張られて、それを見てサケバイ(鮭のアルバイト)
をする者も多いらしい。
再会の予定はいまのところ立っていない。
残念なことだが、仕方がない。
そんな、「鮭の宿のスター」の一人を紹介したい。
数日後、仲間内でその話題が出た。
「なんか、サケバイの面接中に倒れた人が居たんだって。」
「あれね、食中毒らしいよ。」
「それが、例の空手着の男らしいですよ。」
「えっ、そういえばその日、荷物いっぱい抱えて歩いている空手着の男みたよ。」
「その空手着の男、俺も見た。歩道に座り込んで弁当たべてたよ。」
「その男、店の人が期限切れの弁当だから駄目だって言うのを
むりやり貰っていったらしいですよ。」
「原因はそれだ!」
「その男って、鮭の宿に泊まっていたの?」
「そうなんですよ。なんか、武者修行とかいって朝、空手の型かなんかやっちゃって、
めちゃくちゃ浮いてたんですよ。」
「滝に打たれたりしてたらしいですよ。」
「へえー!」
「変わったヤツっているんだねー。」
帰りの旅費をもらったらしいが、家には帰らなかったと言う噂だ。