もう数年前の話になるのだが、元旦にその川北温泉へ行ったことがある。
その日、のんきにTVを視ているとアウトドア好きの友達がやってきた。
金山橋の手前から林道に入ると新雪がかなり積もっていて、
はやくも積み込んだスコップが役に立つときが来た。
車から降りてみてビックリ。思ったよりも雪が深い。膝ぐらいまで新雪が積もってる。
スコップを車に積み込んだあと、ふと思い立って車の後ろにしがみついて
車が走り出してすぐ、だまって車の中に入れば良かったと後悔した。
そうしてるうちに、目的地に着いた。
タイル張りの湯船が二つ。それぞれに小さな脱衣所があり、
まずは、お湯の温度をみてみる。ぬるからず、熱からず・・・・。
さっそく車の中で服を脱いでサンダルを履いて、
しんしんと降る雪の中、ワンカップをやりながら湯船に浸かって
のぼせてくると、湯船を出て雪の中に飛び込む。
本当に気持ちのいいひとときを過ごした後、帰路に就いた。
それ以後は行ってないのだが、実に気持ちのいいひとときを過ごした
標津から斜里に抜ける国道244の金山橋の手前に林道の入り口がある。
その林道を数キロ行ったところに川北温泉がある。
昔、営林署の保養所温泉があったのだが、そこが閉鎖になり、湯船だけが
残っていて、地元の有志がそこを整備し、現在の露天風呂になっている。
道東を旅したライダーならその露天風呂に入った人もいると思う。
ただ、冬の間は、積雪のためそこを訪れるものはほとんどいない。
「これから川北温泉に行くぞ!!」
「おうっ、行く行く!!」
ってなわけで、バスタオルだとか急いで用意して・・・。
それから、ワンカップと・・・、そうそう忘れちゃいけない、サンダル・・・。
そして完全防寒スタイルになって、長靴履いて友達のジープに乗り込んだ。
もう一人友達を誘って、スコップを積み込んで、いざ川北温泉に!!
ジープでも難儀するような状態だ。
そして遂に、前に進まなくなってしまった・・・。
完全防寒スタイルの自分が車から降りて、車の行く手をさえぎる雪を
取り除くことになった。
なんとか雪を取り除いて
「おうっいいぞっ!」
と合図する。車が動き出して、なんとか脱出、さて乗り込もうかと思ったら
車が止まらずにどんどん行ってしまう・・・・。
「おい、まってくれ〜」
スコップを担いで走って後を追うが、なにせ膝までの雪の中。
20mも走ったら息が上がって走れなくなった。
肩で息をしながら100m歩いたところに車が待っていた。
「いやぁ、あそこで止まったらまた動けなくなりそうだったからさぁ・・・」
と言うことだった・・・・。かんべんしてよ・・・。
走ってみることにした。
ライダーの悲しきサガとでもいうか、風を受けて走りたいと思ったのだ。
結構揺れて、必死でつかまってないと振り落とされそうなのだ。
おまけに木の枝が・・・・。
でも、すごく気持ちが良い・・・。
二つの湯船の間には申し訳程度の仕切がある。
これが、川北温泉だ・・・。
泉質は硫黄泉。白っぽく濁ったお湯は硫黄の臭いがする。
いいねぇ、らしいじゃない!!
しかも他に誰もいない、まさに貸し切り状態・・。
3人、奇声をあげながら小走りで湯船に向かう・・・。
サンダルは車から湯船までのあいだを歩くために必要なのである。
近くを流れる川の音を聞いているとなんだか頭の中が空っぽになって
いやなことも忘れてしまう・・・。
「ひぇー!!つっ、つめてー!」
あわてて湯船にはいると全身がピリピリと痛い。
「いてててて・・、でも気持ちいいっ!」
1時間以上もこんな事を繰り返していただろうか・・・・。
帰りは、来たときのタイヤの跡をたどって、楽に帰ることが出来た。
あの、冬の川北温泉は、自分にとって大切な思い出になっている。