会場に流れるウエディングマーチに乗って、二人はゆっくりと入場してくる。 白百合とかすみ草で飾られたヴェール、うっすらと化粧を施した横顔は、たくさんの幸せとわずかな緊張、それからちょっとばかしの不安に染まって、いつもよりも余計に美しく見えた。 ウエディングドレスは純白。 ミニ丈のスカートが、彼女の健康的に引き締まった長い足に良く似合う。 その上に幾重にも重なった極薄のレースとオーガンジーが長く裾を引いていた。 新郎は、白のタキシード姿。 何時も絶やさぬ微笑は優しく新婦を包み込んでいた。 ルリアのデジカメのフラッシュが、二人の幸せな姿を捉える。 「双葉さま、とてもお綺麗ですね〜。霜月さまとお似合いです」 思いもよらずに振られたサジャの言葉に、アストライアは顔を赤らめた。 「いろいろあったよねっ、ここでさぁ…」 感慨深げにアストライアは微笑んだ。 「…しかし、無事に済みますかねえ…なんでよりによって、ここでするんでしょう…」 隅の席で相変わらず半分電脳空間に降りつつレジスは呟いた。 シリウス星系よりも遠い目。 ひとしきり考えてレフティは目を逸らしつつ収まりの悪い茶髪の頭を掻いた。 「…賭けが成立しねえなあ…」 淡々と段取り通りに正確に行われていくフロゥリアの司会で、順調に式は進んでいく。 『では、友人代表といたしまして、南雲ひとみ様よりお祝いの言葉を頂きたいと思います』 はーいと元気に手を上げて前へと出てくるひとみ。 「友人代表って、よりによってひとみかよ… 期待と不安が集中する中、ペコリとかわいらしくお辞儀をするひとみ。 「あ、挨拶の紙忘れた・・・」 第一声からこれである。マイクは正直に彼女の声を拾っていた。 「まぁいいや・・・(良くない) 軽い頭痛を感じて、フェンリルは額を押さえた。 「それから双葉はぁとりあえず十年たったら男を手玉にとるようないい女の人に成長して、峰不二子のよーに逞しく生きているので、弄ばれないように頑張って下さい。 あとはぁ・・・」 長い長い挨拶。既に10分が経過したと言うのに、彼女のトークは全く終わる気配を見せない。 「何故このような長い話を全員でおとなしく座って聞いていなければ成らないんでしょう? 「風水さん遅いな・・」 入り口の方をふと振りかえって、勇二は思った。 「それからね・・・ええっもう終わらせろ? じゃあ直ぐに全部言い終えるから・・・」 すぅっと彼女は息を吸いこんだ。(ZIP32.DLL) きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃん・・・・・・・・・・・・・・!!!!! 空気を振るわせる超音波。 「びえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!」
「あぁ!ど、どうしましょう〜」 「…しっ…静ちゃん! 泣かないでよお」 わたわたなだめようとする一狼。いつのまにか犬耳…いや狼耳が出てしまっていたり。 『…続きまして、祝電(波)を……』 一時中断。 自ら発した超音波でぱたりと気を失ったひとみを菊苑が搬出。 ついでに割れた食器や瓶を片付けていく。 「……ふぇーん、一狼おにーちゃぁん…」 まだぐすぐすと泣き止まない車椅子の少女を、一狼はややうんざりしつつもあやしていた。 『えぇと…あの、予定を変更いたしまして、新婦にはお色直しに行ってもらっています。 何とか必死に段取りを進めようとする菊一文字。 「では…FGTIMESのネスレイ=バーグ様より祝電が届いております」 花模様のウエディング電報をフロゥリアが広げる。 『アー、ヨクシランガ、ダレカケッコンスルラシイナ。トリアエズオメデトウ。 読み上げ終わったフロゥリアは窓に向かって恭しく片手を差し伸べた。 「…やるじゃねーか……」 意外にも送られてきた粋な計らいに、レフティは目を細めた。 「お・ま・た・せゥ」 空色のカクテルドレスに着替えた双葉が新郎の元に戻ってくる。 「えぇ、待ってました。…そのドレスも綺麗ですよ?」 にこにこと答える新郎。どんなときにもその笑顔の仮面は外れる事がない。 『では、新婦も到着いたしましたので、花束と記念品の贈呈を…』 立ちあがりる新郎の腕に新婦はきゅっと抱きつく。 「待って!」 ばんっと入り口の扉があけられる。 A「あ、あなた誰?!私の顔して出て来ないで!」 驚いてうろたえる新婦。 B「その人は偽者よ!」 困ったようににこにこしている新郎。 「どちらもお綺麗ですよ?」 そう言う問題じゃない。 「…どうかしてるぜ。幻覚か?」 「増えましたね」 B「私のことわかるでしょ?」
新郎に詰め寄る二人の双葉。 B「雄也さんから離れて!」 引き離そうとした双葉達は、もつれるように転ぶ。 「…ひどいわ。せっかくのドレスが台無しじゃない…。」 パタパタとスカートをほろいながら立ちあがる双葉。 「何で偽者なんか出てくるの…?」 パタパタとスカートをほろいながら立ちあがる双葉。 「やっぱりここってどうかしてるわ!」 「…また増えてる。」 良くない。 1「え・・?」 新郎に詰め寄る三人の双葉。 「分裂増殖しても構いませんよ。(にこにこ)どなたも僕の大好きな美しい双葉さんです」 構わなくないってば。 『では、花束と記念品の贈呈を…』 ……淡々と進めるな。 さて、いよいよクライマックス! 増える新婦にのんきな新郎! 果たして本物の花嫁はどこに!? って訳で、次回を最終回に予定しています。 アクションの送り先はMainGate統括管理者。 |