飾り付けの完了したラウンジ。白とピンクの花にレースのリボンを添えて。
ひび割れの入った壁などは白レースのカーテンなどで覆い隠してある。
 
 先に会場に戻っていたフロゥリアは結婚式から慌ただしく戻ってきたもう一人の司会を出迎えた。
無論、機器の確認の手は休めない。
 
「ごきげんよう、菊一文字様」
 
 代わり映えのしない無表情。いつものことではある。
 
「念の為、マイクテストお願いします。私は、電波のテストしてますから」
「えぇ、かしこまりました。
…今度こそは何事も無く終われば良いですね……」 
 
 深くため息をつきつつ、菊一文字は答える。
結局大騒ぎになってしまった結婚式。
…組む事になっているもう一人の司会者は先ほどの騒動の共犯者である。
主犯だった『シ神』と名乗る男は、そっちの隅っこで簀巻きにされて目下反省中では有るが…。
 とりあえず、無事に披露宴を執り行わなければ!
…彼の意気込みも誓いも…無駄になることは既に明白ではあった………。

「やは♪まだこれだけ?」
 
 いつものように明るくルリアが飛びこんでくる。
いつもどおりではないのはその姿。
黒いワンピースに白バラのコサージュ、うっすらと化粧もしている。
もっとも、それはそれで案外彼女の違う魅力を良く引きたてていた。
 
「…って……ルリアお前……」
 
 紫遠が唖然としたのはその格好の事ではなかった。
彼女の後ろを地響きを立てながら付いて来ていたのは歩く冷蔵庫
ご丁寧にも白とピンクのリボンで飾り立てられている。

「やあねぇ(笑)結婚祝いよ、結婚祝い。」
 
 ケラケラといつものように笑いながら彼女はリモコンを取りだし、冷蔵庫に向かってボタンを押した。
うぃぃぃ・・・・・んと機械音とともに変形。手足が収納されてその場所に落ち付く。
 
「ほら、冷蔵庫でしょ。それも左右開き」
「おぉぉ!? どうなってるんだ?」
 
 右からドアを空けてウーロン茶を出して閉じ、左側から開けてウーロン茶を仕舞う。
 
「これ…もしかして右と左で中身とか違うのか?」
「さぁ? どうかしら♪」
 
 くすくすと笑いながらルリアはぺちぺちと冷蔵庫君を軽く叩いた。



 設置されたスポットライトや照明が彼の支持どおりに明滅する。
 
「おっけーですわ♪ レジス様」
「うん、じゃぁ…次は……」

 立ち上げたホログラフィーモニターの中をデータが駆け上がる。
横からひょこっと覗きこんでいるのは薄桃色の振袖の少女。
その姿が透けて見えるのは、彼女もホログラフィだから。
レジスの端末は彼女のシステムにログインしているのでこちらに出てくることも、画面を覗きこむ事にも全く意味は無い。
 気分の問題だと彼女は言っていたが。

「僕の音楽データのコレクションは、すごいですよ♪ 
村雨さんも、リストいかがです? 
曲名、アーティスト名、ジャンルから検索できるし、すっごく便利なんですよ〜」
「まぁ♪ それは便利そうですのね〜。
『伍楽師』のサイトにアクセスできなくて困ってますの。データ有ります?」
 
 きゃいきゃいと楽しそうに話しかける少女。
彼女が、このステーションの管理システムエージェントだと一目で気がつくものは少ないだろう。
 アステロイドベルトの移住者居住区帯。
その中でもトップクラスの技術の粋を集めたAIシステム。
だが、その実体は思春期の少女とほぼ変わることは無い。
…もっとも、それこそがこのシステムの凄さなのかもしれないが…。

「え〜っと、結婚式につかえそうなのは、これと、これと…
あ、余興でカラオケなんかもわるくないですよね! 
いちおう、データを用意しておきましょうか♪」
「あ、それいい感じですわ♪
新郎新婦入場は…このMIDI使ってくださいの♪」
「なにやってるの〜? 俺も混ぜてよ〜」
 
 後ろから不意に覗きこんで割りこんできたのはレフティ。
黒尽くめのスーツに白いネクタイを絞めている。
ちなみに、レジスはいつもどおりのVE社の制服である黒スーツに青いシャツ。

「BGMの選曲ですわ、おぢさま♪」
「ほー…どれどれ?
んだよ、その地味な曲は〜! もっと派手なのにしようぜ!」
 
 サングラスをちょっとずらしてリストを覗きこんだ彼は、やや大げさなリアクションで眉をひそめた。

「チーフは手を出さないでくださいよ。
 うちのカテゴリーのレセプションで、BGM、こっそりフレンチカンカンに
 差し替えたの、チーフだって、もっぱらの噂ですよ…」
「あの時の司会の顔ったら、なかっただろ? たまんねえぜ、実際」
「やっぱりチーフか…。って、邪魔しないでくださいよ〜。時間がないんですから。
キンタの大冒険なんか流された日には取り返し付かないですからねっ?」
 
 くくっと人の悪い笑みを浮かべる上司をうんざりとレジスは押し戻す。
 
「まあ、せっかくの双葉と霜月の披露宴だ。そんな野暮なことはしねえよ。
しかし、ここで披露宴することになるとはねえ…」 

 感慨深げに彼は紫煙を燻らせた。
右目にはぼんやりと集まってくる参列者の姿が見える。
いつもの馬鹿騒ぎの楽しい連中。
それらがそれぞれ着飾って二人を祝福するためにこうして一同に会している。
 
「Gateによって結ばれた別々の世界の住人が結婚する、か。
面白いとは思わんか?」
 
 集まってくる参列者の姿も様々。故郷も様々だ。
魔王にロボット…天使……何がいてもおかしくない空間。
それぞれの世界、それぞれの人生…それがすれ違う交差点がこの地だと言ったのは、始めて自分に敗北を味合わせた女。
 この二人の結婚は、まさにそれを象徴しているのであろう。

「僕はむしろ、出会ってから挙式までの速さのほうが興味深いと思いますけどねえ」
「びびっとくるものがあったんだろうよ。電撃結婚もまあ、ありだろう」
「そうですねえ…っていうか、わかったから邪魔しないでください」
「わかったわよ〜、黙ってるから邪険にしないでよぉ」
 
 レジスはため息混じりにひらひらと手を振って上司を追い払う。
瓶から直接ジンを喉に流しこみ、おどけるように背を向けた。

「あっ、編集長〜♪」
 
 ふわりとピンク色の姿が駆け寄ってくる。
サングラスを外して、レフティは目を細めた。
 
「お?朱羽か?
似合ってるぜぇ〜?そのドレス♪」
「そう? やっぱり買ってもらって良かった♪」

 うれしそうに朱羽は微笑むとくるりと回って見せる。
ふわふわとサテンに重ねたオーガンジーのスカートが揺れた。



 銀の鎧に儀礼用の黒いマントをつけたチタンの騎士が壮年の男性を案内してくる。
それに続くのは同じく黒いマントをつけた装甲機兵に両脇を抱えられ、引きずられるように入ってくる青年の姿だった。
 花嫁の父は静かに席につき、その隣の席に連行されてきた青年が括り付けられる。
ご丁寧にも、その右手首は父親の左手首と手錠で繋がれてしまっていた。
 アンリ=ローラン。もしくは香月一葉。
異常なほどのシスコンとして知られている彼は、この結婚式の主役たる新婦双葉の実の兄だった。
 
「全く……お前と言う奴は…」
 
 披露宴に参加すると言い張って聞かない兄に花嫁が出した条件が『とりあえず、縛っておこう』……である。
父からしてみれば、何もそこまで恥さらして披露宴にでなくても……と思うのだが。
 
「何で許可したんですか父さんっ! あんな男に、レティはやれません!」
「ここに来て、まだ言うか……」

結婚は許し難いが、花嫁姿を見ないわけにはいかない……。
可愛い妻と子供もいるというのにそれをほったらかして、ここまで突っ走った息子を見て、しみじみ溜息をつく。

「せめて今だけは祝福してやれ。あれの不幸を望んではいないだろう?」

不承不承、苦い表情でアンリは頷いた。



  隅の方でフェンリルは薄荷煙草に火をつけた。
懐の銃に鎮圧弾が装填されていることをもう一度確かめる。
ただで済む訳が無い。そんな予感は既に確信だった。

「お? お前何してんの?」
「何って…見ればわかるだろう?」
 
 カクテルグラスを載せたお盆を持って会場を回っているのはシン。
タキシードにソムリエエプロンをつけたその姿はすっかりバーテンダーとして板についていた。
 
「何か軽いのくれる? 甘ったるいのは駄目な」
「ギムレットで良いか?」

 渡されたグラスを手に取り、ニヤリとフェンリルは口元を歪める。
 
「さんきゅ。似合ってるぜ?」
「…お前もな」
「駄目駄目…俺がこんなスーツ着るとホストにしか見えねーもん」
 
 うざったそうに緩やかなウエーブのかかった銀髪を掻き上げる。

「無事に終われば良いがな」
「…無事で済む訳無いだろ? …見ろよ……」
 
 煙草を持ったまま指し示した先ではルリアが最前列中央通路のすぐ横の席でデジカメを構え、
ラベンダー色のフリルのドレスを着たひとみがメモを見ながらしきりに何かを呟いている。
 
「…またお呪いか?ありゃあ……」
「いや、友人代表挨拶だと聞いたな…俺は関わるのは御免だぜ?」
 
 シンは逃げるようにさっさとキッチンへ消えていく。
嫌な予感…それだけが集積していくのをなんとなく感じていた。  



 「そろそろお時間ですね…」
 
 時計を見ながら正宗は呟いた。
ラウンジ入り口に置かれた長机の受け付けで、暇そうに足をぶらつかせている。
使っている機体はいつもの少年型。
 記帳用のノートを閉じて会場に入ろうとしたとき、駆け込んで来る足音に気が付いた。
 
「ふう…間に合ったのかな?」
「ぎりぎりでしたね。」
 
 男のほうの助手が腕時計を確認して答える。
 
「カラ君、ユージ、息切れはしてないね?」
「なんとか大丈夫です・・」
「いらっしゃいませ。こちらに記帳お願いします」

 ペコリと頭を下げた正宗に答えて、参列者名簿にさらさらと名前を書き込む。
若い探偵はちらりと周りを見まわして、正宗に小声で耳打ちした。

「すいませんけど、お手洗い何処でしょう?」
「それでしたら…あちらの角を曲がって右ですが」

 通路を指差して正宗は答え、風水はにこやかにうなづいた。
 
「カラ君、ユージ。ちょっと先に行っててくれないか?後で必ず行くから」
「わかりました。先に行ってます」
 
 心配そうに振り返りながらも、助手達は先に会場へと入る。
寄ってきた菊苑にうなづいて、正宗もその場を電脳騎士と交代する。
 
「…さてと♪」
 
 楽しげに会場を後にする風水。足の向いた先は教えられた方向とは正反対だった。 



「では、新郎新婦の入場です。皆様拍手でお迎え下さい」
 
 フロゥリアの声が会場内に響く。
ウエディングマーチが流れだし、入り口にはスポットライト。
 そして、ゆっくりとドアが開いた。


 と、言う訳で……
諸事情により今回は始まるまで。
ここに使われなかった投稿アクションは次回以降に繰越ですが、訂正及び追加行動も受け付けます。
ミッションノベルは目立った者勝ち。
適切な所に詳しいアクションを送れば送るほど目立てます♪
登場していないキャラも一応その他大勢として既に会場内に出席しているということにします。
今回投稿できなかったキャラも、「居た」ということになりますのでべしべし送ってきてくださいな♪

さて、次号予告

冷蔵庫君vs超音波娘!?
そして行方をくらました風水の真意は如何に!?
いつのまにかこっそり抜け出す白い影!
やっぱりラウンジは戦場と化すのか!?
疾風怒濤の披露宴!菊一文字の苦悩は続くっ!

って訳で……
大騒ぎになることは必死ですな。
各自、騒ぎに巻き込まれた反応と新たに起こす騒動を中心に(って…をぃ)
まぁ…キャラらしい言動を心がけて投稿してきてください。
…口火を切るのは…友人代表挨拶です(笑)
 

アクションの送り先はMainGate統括管理者
第2回締め切りは11月03日(水曜日)です。


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