ミッションノベルNo-1

To Wepon Tower... 第1話



「あの・・・すみません」

 TowerGateへと歩き出した三人の後ろから、落ち着いた女性の声がかけられた・・・

天空「ん?」

 初めに反応したのは天空だった。すでに、気配を感じていたのだろう。
三人が振り向いた先には、頭にバンダナをまき、白っぽいマントやアミュレットをつけた、魔道士の様な女性が立っていた。
年は若く見て16、7。落ち着いた感じのする、美人な女性だ。
こういう美人を見慣れてないからか、リッキーは少し戸惑った様子で、きょろきょろしている。

正宗「何か御用ですか?」
女性「あの・・・あなた達は、WeponTowerへ行かれるのでしょうか?」
リッキー「ああ、そうだぜ。おっと、オレはリッキーだ。Gaincityのピジンでメカニックをやってるからな」

 意味もなく、少し前に出るリッキー。

女性「あ、私はソウ・・・ソウ=ブロウムーンです」
リッキー「ソウっていうのか。で、どうかしたのか?オレ達に声をかけて」

 その言葉に、ソウは迷っている様子だったが・・・口を開いた。

ソウ「私もWeponTowerのある場所に用事があるのですが、私一人では・・・」
正宗「そうですか。どのような御用なのでしょうか?差し支えなければお教えいただきたいのですが」
ソウ「それは・・・」

 何気なく言った正宗の言葉に、言葉を詰まらせるソウ。
しかしその直後、4人の前にいきなりまた別の女性が現われた。

リッキー「おわっ!!」

 大げさなほど驚くリッキー
そして、天空は左腕のデリンジャーを手の中にスライドさせている。
だが、その現われた女性は、辺りをきょろきょろ探し・・・

女性「お、いたいた。正宗君、やっほぉー」
正宗「タ、タオさん?早いですね・・・」
リッキー「なんだ?知り合いか?」

 少し離れた所から声をかけるリッキー。
それに対し、タオと呼ばれた女性はにこりとして振り向く。

タオ「何しに行くか良くわかんないけど、ついて行くことになったからよろしく♪私の名前はタオ・ミンっていうんだ。君達は?」
天空「天城天空だ。よろしくな」
リッキー「オレはピジンでメカニックをやってるリッキー、リッキー=ガルフォードだ」
ソウ「ソウ=ブロウムーンです」

 天空は軽くマントをなびかせ、リッキーは手を前に出し、ソウは深々と礼をして挨拶をする。
三者三様、と言ったところだ。

タオ「そう、よろしくね。で、何しに行くの?聞こうと思ったらもう正宗君いなかったから」
正宗「あ、そうだったんですか。実は人工皮膚用の炭素繊維が必要なので、買い物に行くだけなんですけどね」
リッキー「ピジンには人工皮膚なんて付ける意味がないからな。だからわざわざ向こうまで行かなきゃなんねえんだ」

 ピジンに人工皮膚やその為の炭素繊維が少ないのは、ここでは当り前の様なものである。
そもそも、人工皮膚はHFR[ヒューマンフォームロボット]の為にあるのが普通だ。
しかし、ここのロボットはHFR自体ほとんど無く、それゆえに需要が全くと言っていいほどない。

タオ「そうなんだぁ。ま、一緒に行くよ。どうせ今は仕事ないしね」
天空「三人とも盛り上がってるところを悪いんだが・・・あの美人の方を忘れてねえか」

 三人の間に割り込み、話にはいる天空。
ソウの方は、その言葉が聞こえたのかどうか分からないが、手を前で握りしめ、何か悩んでいる様子だ。

正宗「あ・・・ごめんなさい。それで、どの様な御用で・・・」
ソウ「・・・・・・」
天空「おいおい、そんな事、聞く必要ねえだろうが」

 間に割ってはいる天空。

天空「んなもんは必要ないだろう?少なくとも美人にゃ悪い奴はいねえよ。それに困ってるみたいだからな。ま、俺としても教えてほしいがな」
ソウ「あ、はい・・・ごめんなさい」
天空「いいって事よ。それより何かあるんなら俺を雇わねえか?ボディガードでもなんでもやってやるよ。ただし、報酬はいただくぜ」

 ソウの顔には多少明るさが差したが、まだ少し迷いの色が見える・・・
それとは反対に、天空の方はもうついていくつもりの様だ。

リッキー「こいつの腕を疑ってるのか?オレもそんなに見てねえけど、こいつの銃の腕は大したものだぜ」
天空「そういうこった。ま、カスタムマグナムがねえのはちょっとつまらねえけどよ。あんたが依頼しねえのならこの話はなかった事になるが、どうする?」

 その言葉を聞き、ソウは顔を天空に向け。

ソウ「・・・わかりました。お願いします」

 そう言って、天空に深く礼をするソウ。
それと同時にバンダナから出た髪の毛が揺れる。

リッキー「・・・」
天空「こちらこそよろしくな。ま、誰であろうと俺の銃の前じゃ勝てねえから安心しろよ」
正宗「・・・危ない事はしないでくださいよ? 騒ぎになっては困りますから・・・」

 少し不安そうに釘をさす正宗。
だが、天空は全く気にも止めずに腕を鳴らしている。

タオ「ねえ、そろそろ行かないの?」
リッキー「ん?ああ、そうだな」
天空「で、ソウの目的地はどこなんだ?」
ソウ「それは・・・WeponTowerに入ってから、お教えします」
リッキー「じゃ、そろそろTowerGateを通過しようぜ。そっからは正宗とタオはオレについてきてくれ」
正宗「はい。わかりました」
タオ「オッケー。よろしくねっ」

 こうして、5人はTowerGateへ向かった・・・


 GateからWeponTowerに入ってすぐ、リッキーはWeponTowerを囲む外壁にあるタッチパネルへと向かった。
そして何やら操作をして、舌打ちをひとつする。

リッキー「チッ、また町並みが変わってやがる。この外壁にそって歩けばいいのか」
タオ「遠いの?」
リッキー「まあな、オレの知り合いの店はここらへんだ」

 そう言ってリッキーは、パネルに写しだされた地図の一点を指差す。
現在地として点滅している場所はEastGateと書かれ、リッキーが指差すところはちょうどWeponTower北西部だ。
直線距離ではそれほどなさそうだが、中心へと続く道が多く横道があまり無いため、外壁にそって行くのが一番近い様だ。

リッキー「もっとも、無事ならばの話だけどな」
正宗「無事ならば?どういう事ですか?」
リッキー「別に心配すんなって。ま、大丈夫だろ、あのおっさんなら」

 明るく言うが、正宗は多少不安を隠せない。

タオ「もしかして、ピジン出身なの?その知り合いって」
リッキー「ああ、よくわかったな」
タオ「そんなの、わたしもGaincityの人間だもん。それに知り合いの武器屋にもピジン出身で苦労してる人知ってるしね」

 タオの職業は運び屋。もちろん通常の運び屋ではなく、武器などの危険な運び屋である。
その為に知り合いも多いのだろう、その中にピジン出身が居ても不思議ではない。

リッキー「そうなのか?じゃあウィッティーって言う、仕入れ屋を知ってるか?」
タオ「んっと・・・知らないと思うけど、それが知り合いなの?」
リッキー「ああ、ならいいか。じゃ、急ぐか」
正宗「そうですね、この右の外壁にそって行けばいいんですね」


天空「で、これからどうするんだ?」

 Gateから入り、リッキー達と離れてからすぐに、天空は左手のデリンジャーをいじりながら言う。
ソウの方も少し躊躇していたが、TowerGateの中心へと目をやり・・・

ソウ「あそこに立っている・・・3番目くらいに高い、あのビル。Biasビルです」
天空「そうかい、Biasビルか・・・」

 そう言って、天空も中心部を高く見上げる。
そこには一本の巨大な塔の様な物を中心に、異常なまでの高さを誇るビルが立ち並ぶ・・・

天空「あの変なマークがあるとこか?」
ソウ「はい、そのビルです・・・それからの事は、着いてから話します」
天空「オーケイ、じゃ、まずは行ってみるか」


 所どころにある小さな店の前の人ごみを抜け、外壁にそって歩く3人。
そして、丁度NorthGateに着いた頃、リッキーはふと立ち止まった・・・

タオ「どうしたの?」
リッキー「ん・・・ちょっとな」

 タオの言葉に曖昧な返事をして、軽く背伸びして遠くを見ているリッキー。
その先には他の場所と変らず大きめのビルが立ち並んでいる様だ。
それを見て、正宗が軽く首を傾げる・・・

正宗「あの辺りにリッキーさんの知り合いの方が居られるのですよね?あのビルのどれかですか?」
リッキー「いや、普通の露店みたいなとこだったんだけどな・・・」
男「あれ?タオさん?」

 立ち止まっていたタオに声をかけたのは、ちょっと若く、筋肉質な男だった。

男「どうしたんですか?今日は仕事じゃないですよ」
タオ「やっほ、今日は寄っただけだから気にしないで」
正宗「あの・・・この方は?」
兼洛「あ、皆さん、はじめまして。オレは武器屋をやってる奴で兼洛って言います。タオさんにはお世話になってるんですよ」

 営業者風な礼をする兼洛。

兼洛「じゃ、オレは仕事があるんで・・・」
リッキー「あ、そうだ。お前この北西部の露店にいたウィッティーって仕入れ屋、知らねえか?」

 リッキーの尋ねた言葉に、ちょっとした反応を見せる武器屋。
そして、少し重い顔でリッキーの方を見て・・・口を開いた。

兼洛「・・・あの一帯は、ついこの間ぶっ潰されました。ですから、その人がどこに居るのかは・・・」
正宗「潰された!?」
リッキー「やっぱりそうか、ありがとよ」

 軽く礼を言って、リッキーはコインを一枚兼洛へ投げわたす。
兼洛はそれを受け取り、そのまま人ごみの中へと消えて行った・・・

正宗「潰されたって・・・」
リッキー「なんとなく予想はついたんだがな、ここの連中のよくやることだ」
タオ「WeponTowerは狭いからね、露店とかは潰してビルにする事が多いの。特にピジンの人間が多い所を優先して整地するからね・・・」

 WeponTowerは、円形をした狭い地域の名称である。
狭いのならば広げればいい、と思うかも知れないが、実はそう簡単にはいかないのだ。
WeponTowerのすぐ外はピジン、それもピジンの中でもかなり大きめの建物がそろっているのだ。
そして、その建物の持ち主の中にWeponTowerと通じている、つまり賄賂を送っている者もかなり多いらしい。
その為、簡単に退けるわけにもいかず広げる事も不可能。というわけだ。

タオ「じゃ、どうするの?その人がいないんだったら他の人のとこで買う?」
リッキー「他のとこか・・・かなり値段が高く、質もそこそこだからな・・・どうする?お前が決めた方がいいと思うけどな。ウィッティーを探すか、他のとこで買うか」
正宗「え?僕がですか?・・・困りましたねぇ・・・」

 その言葉と同時に、小型のアンテナの様な物が出てくる・・・

正宗「ちょっと尋ねてみますが・・・」
リッキー「ん??誰にだ?ま、いいけどよ」

 正宗は、瞳を閉じる・・・そして、待つことしばし。
タオやリッキー達は周りの店などを少し見ていると、正宗が瞳を開いた。
正宗「・・・自分で考えろですかぁ?・・・しかたないですね」
リッキー「どうしたんだ?」
正宗「自分で考えろって言ってきました。しょうがないですね・・・」

 言いながら小さく苦笑する正宗。

タオ「んじゃあ、どうするの?」
リッキー「ウィッティーを探すか?それともどっかで買うのか?俺はどっちでもいいけどよ・・・」


天空「・・・で?ここからどうすんだ?」

 Gateで言った言葉と同じ様な言葉を言う天空。
ただし場所は先程と違い、目の前には見上げても先が見えない程の高さのビルがそびえたっている。
そして入り口にはガードマンが数人・・・

ソウ「・・・このビルの中なんですが・・・」
天空「そうかい、で、正面から入れる・・・なんて訳ねえよな」
ソウ「はい・・・・・・ですから、侵入か・・・強引に入るか・・・」

 顔に似合わない様な事を言うソウ。
もちろん、こんな会話を目の前で堂々としているのではなく、少し離れた路地裏・・・と言った所で話しているのだ。
もちろん、路地裏とは言え中心部近くの為に人通りが少しあるが・・・

ソウ「潜入方法は・・・お任せします」
天空「そうかい?じゃ、責任重大ってやつだな」

 そう言って天空は、マントをバサッとひるがえした・・・


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